世界は穀物不足と高騰に苦しんでいるというのに、わが国では主食の米が余り、生産者米価の下落に歯止めがかからない。奇妙なねじれの中にある食糧自給率39%の日本の食と農。その打開の道も見えぬというのに、こんどは燃油、肥料、飼料、生産資材の高騰が追い打ちをかけている。果たしてこのまま食料生産を続けられるのか。そんな不安漂う東北の田園だが、東北の農業者はたくましい。この逆境をのりこえて前に進もうという動きが各地でおきている。それは、ゆらぐ水田農業を補う新たな作物の導入と、地域連携による産地づくりへの挑戦である。
産地づくりの基本はまず、それぞれの風土の特性を生かした作物の開発である。中山間地の気象条件に合う作物は何か。在来種の野菜の見直しはどうか。高齢者でも労働負担の少ない作物はどれか。様々な視点から指導助言するのは、地道に研究を重ねてきた各県の農業試験場や研究普及機関。その努力の成果がいま各地で実を結ぼうとしている。
しかし産地づくりの決め手は何といっても意欲ある生産の主体づくりである。これまでは個人や家族農業が中心だったが、これからの農業経営は個人戦から団体戦へ。いわば農の地域力、共同の力が問われる時代。多様な生産組合、農業法人、集落営農など、その形は様々だが、大切なのは生産者の地域連携。むろん加工組織や食品工業との連携も欠かせない。JAなどの支援体制も重要になってきた。そして産地づくりをすすめる東北の農業主体が共通して見すえているのは家族の食卓。その食卓の期待にこたえる食べ物とは何か。そのためのよい土づくり。信頼される農法。お互いの経験と知恵を持ち寄り、各地で努力が積み上げられている。
食糧危機とまでいわれる厳しい状況の中で、なおあきらめず食の安定と信頼される生産に汗を流す人々が身近にいる東北。それが私たちの幸せと安心を支えている。ならば東北に住む私たちは、この頼もしい農の新たな努力に対して何ができるだろうか。問われているのは農(生産)の地域力に合流する食(消費)の地域力と、その積極的な参加支援なのではないだろうか。
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