今年発表された農水省の「地産地消に関する意識・意向調査」によれば、9割の人々が地産地消を意識した食生活を心掛けていると答えている。むろんその意識は必ずしも行動と一致しているわけではないが、少なくともかつて離れていた生産と消費の距離と関係が、地元で生産される食材を介して着実に近づいていることだけは確かなことである。 地産地消への関心は教育現場にも波及している。学校給食への地場食材の供給はもちろんのこと、子どもたちの生きる力をはぐくむために、時に教室を飛び出し、身近な農地や自然を学びの場にして、そこで働く人々を教師に迎え、土づくりから種まき、収穫、料理までを行う体験学習の内容も充実してきた。 農業の担い手として期待される農業高校や大学にも変化が現れている。これまでのように農業生産技術の習得だけではなく、自分たちが栽培した野菜の直売や加工品づくり、さらにはグリーンツーリズムなどの交流活動や環境保全活動など、これまでの教育の枠を超えて地域の人々と積極的に連携を強めている。 都市の若者もまた食と農に高い関心を寄せている。内閣府の調査によれば、20代の若者たちの3分の1が農山村への定住願望を抱いているという。なぜ彼らは食と農に関心を持ち始めたのか。そこには食料自給率低下が著しい日本の食の未来は大丈夫か、そして高齢化と担い手の減少が進む農の行方はどうなるのか−という生産・消費の2つの不安が横たわっているような気がする。 閉塞感から抜け出せない日本社会の中で、長き人生をどう生きるか。まだまだその展望は見いだせないが、せめて生きる土台の食の安定と安心はわが手で−と思いめぐらせている若者たちの心がうかがえる。 食を買う力を高めるだけが唯一の道ではない。むしろ、食をつくる力を人生を生きる力にしたい。そんな若者たちが確実に増えている。そして、地産地消は食の領域にとどまらず、身近な人と人がつながって生きる古くて新しい地域づくりへと歩を進めようとしている。
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