宮城県・河北新報『イーストファームみやぎ(美里町南郷)』
農家のお母さん方が蒸し上がった赤飯やもち米を手際よくパック詰めする
ササニシキやひとめぼれの田園地帯が広がる宮城県美里町。早朝の加工所からリズム良く米をつく音が響いてくる。「毎朝大忙しだ」「土運びでくたくたになった時代よりいいわ」。炊き上がったもち米に、ずんだやきなこを絡めるお母さん方の声は明るい。
加工所の通路には豆腐やポン菓子、米粉で作ったバターロールがぎっしり。どれも55ヘクタールの水田と転作田でとれたコメや大豆が原料。パッケージを終えると午前のうちに地元産直所や近所のご祝儀、約40キロ離れた仙台市の百貨店などに配達する。これを毎日。
「栄週米」と名付けた独自の栽培方法で付加価値の高いコメづくりと、大豆など良質な転作作物にこだわる農業生産法人「イーストファームみやぎ」にとって、加工品はもうひとつの人気商品だ。販路は通販会社や宮城ふるさとプラザ(東京)にも広げており、代表の赤坂芳則さん(56)は「コメの消費低迷を考えればもっと商品開発したい」と意欲をみせる。
前身の生産協業組合が設立されたのは1984。農家経営が厳しくなる中、生産コストを下げて所得を高めようと農家4戸で協業化した。
転機は93年の大冷害のときに訪れた。全国的な米不足の中、減農薬減化学肥料米の評判が口コミで広がって産地直送契約者が30人から600人に急増。「産直契約者に加工品を売り込めるのではないか」と着眼した仲間たちはその翌年、農業生産法人となり加工センターも設けた。
経営感覚の鋭さだけでなく加工のアイデアも豊富だ。しゃぶしゃぶ薄もち「うすっこ」、酒造会社や菓子屋などと連携したササニシキ100パーセントの純米酒、せんべい、みそ…。商品は20数種類で、都市圏に販路開拓するため長期保存が利くよう工夫を凝らしている。
2003年7月、加工所は震度6強の宮城県連続地震に見舞われた。機械類が破損し、従業員10人の自宅も全半壊。操業は一時停止に追い込まれ、さらに冷害が追い打ちをかけた。「あのとき、取引先や産直顧客からの物心両面の支援がなければつらかった」と赤坂さんは振り返る。
イーストファームみやぎのひとめぼれは市場価格の1.5倍で、加工品は総売上高の半分を占めている。インターネットの普及によって産地直送が定着したことも一因だが、それを可能にしているのは、棚の一角に置かれた四千枚の「名刺」が築き上げた販路だ。
国は07年度から経営安定対策を見直し、水田転作の補助対象を法人や集落営農組織に集中させる。赤坂さんにとっては「20年遅れの大転換」にも映るが、「農業もやり方次第で生き残ることができる。これからも生産者、消費者が互いに顔の見える関係を強化したい」と力を込めた。
水稲の出来に目を細める赤坂さん
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