福島県・福島民報社『つくる人と食べる人をつなぐ農業集団「ジェイラップ」(須賀川市)』
稲田米について説明する伊藤社長
農産物の注文生産を請け負う流通会社。注文から生産、発送まで責任を持ち、農家と消費者を信頼でつないでいる。環境や安全に配慮して農家が大切に育てた作物を、本当に必要としている消費者に届ける。
どのような品物をどれだけの量必要としているか消費者から注文を受ける。単純に産品名で受注するだけでなく、栽培方法の要望にも可能な限り応える。注文をあらかじめ聞くことによって、必要な農作物を必要とする人や業者に届けることができる。契約の時点で価格も決める、農業では全国的にも珍しいシステムだ。
生産は生産者技術研究のための組織「でんでん倶楽部」に委託している。倶楽部には福島、茨城、栃木の各県の農家二百戸以上が所属し、品目ごとに研究会を設けている。米や雑穀などの穀物、モモ、リンゴなどの果物、キュウリ、ネギなどの野菜といった約五十品目をそろえることができる。
同社は倶楽部に生産技術の指導や資材の供給をして、消費者に商品が確実に届くためのシステムを支えている。
栽培方法や品質、安全性に強いこだわりを持っている。農薬を抑え、有機肥料で栽培する。安全・安心な食べ物は味、栄養価に優れているだけでなく、化学肥料を使わないことで環境への影響も抑えることができる。人に優しく、農業を支えてくれる自然にも優しい生産方法だ。
特に評価が高いのは稲作研究会によるブランド米「稲田米」。福島県中通り地方で低農薬で生産するコシヒカリやササニシキで、会社の所在地一帯を指す「須賀川市稲田地区」の名称にちなんでネーミングした。約七十戸の農家が年間四百八十トンを生産している。
中通り地方の米は軟質で、やわらかく炊き上がるのが特徴。全国各地に熱烈なファンがおり、高級旅館や割烹(かっぽう)などでも好評だ。 倶楽部が納めた玄米を同社で精米し、商品パッケージする。保管場所も清潔、適温に保ち、「農作物は人の手で仕上げた最高の製品」という同社の考えを消費者に届くまで貫いている。
自然環境への配慮のため、米ぬかも無駄にはしない。ぬかを利用して有機肥料を作り、倶楽部の農作物栽培に活用している。
品種改良した「ミニキュウリ」も独自の商品として人気が高い。キュウリの長さは通常二十一センチほどだが、十四センチと小ぶりにした。食べ切りサイズで消費者の受けも良く、高い栄養価も注目されている。
消費者の声や評価、求めているものを直接聞くために毎年、生産者と消費者の交流会を開いている。紙上アンケートなどではなかなか知ることができない消費者の本音、生産者が作りたいものを語り合う。どこでどんなものが栽培されているのかを細かく知ってもらうために農場の見学会も併せて実施する。
消費者が無農薬の作物を必要としても、生産者が技術的に必要とされる量をそろえられないこともある。交流会では、食べる側の「必要」と作り手の「可能・不可能」の合意点を見いだし、互いに納得して生産に乗り出す。
注文生産は農家の自主性の高まりにもつながっている。ただ作るだけでなく、何をどう作れば売れるのかを考えながら栽培するようになった。伊藤俊彦社長は「農業もものづくり。農家は自分たちの作っているものの評価を知らなければならない」と話す。
発足は平成七年七月。家業の農家を手伝っていた伊藤社長は若手農家の勉強会に参加しているうちに無農薬、低農薬の安全な農作物が必要とさていることを感じた。本当にいい物を届けようと農家と消費者を取り持つ会社を興した。
「本当にいいもの、おいしいもの」を消費者に着実に提供するうちに会社は軌道に乗ってきた。それでもニーズに応えるためには社会の変化に合わせるのも必要だ。そのためにも常に新しい発想が求められる。
自然のおいしさを維持できる産地加工のメリットを生かした加工食品の販売など、伊藤社長の発想はどんどんと広がっている。伊藤社長は「農業は奥深い。常に進化する組織でありたい」と意欲を語っている。
須賀川市泉田字作田18の2。平成7年設立。農産物の注文、生産、発送を一環して行う流通業者。人や自然の安全に配慮した農産物を取り扱い、全国各地に顧客がいる。年商約20億円。問い合わせは 電話0248(62)5899。
全国各地に熱烈な愛好家がいる稲田米
消費者と農家を直接つないでいる交流会
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