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宮城県・河北新報社『農家レストラン「蔵楽(くらら)」(大崎市田尻)』
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 宮城県を代表する銘柄豚「宮城野豚(ミヤギノポーク)」の産地、大崎市田尻。自家飼育の豚をメーンにした料理を提供する「蔵楽(くらら)」の食卓の鍋に湯気が上がった。店主の佐々木重信さん(53)は、しゃぶしゃぶの食材を並べながら、「脂の融点が低くて舌触りがいい」と笑顔をとろけさせた。
 しゃぶしゃぶの豚肉は赤身にサシがたっぷり入る"霜降り"が特徴のロースとバラ。広めの飼育空間で、割高だが遺伝子組み換えのないトウモロコシを与え、薬も控えて育ててきた。この自慢の食材に、これも自家栽培のカブやソバの菜などを添えている。
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東都生協(東京)の農村体験ツアーで訪れた家族連れに、佐々木さん(右)が、そばの打ち方を教える
 しゃぶしゃぶだけでなく、豚肉と豚骨を一晩中煮込み、南蛮ニンニクとみそで味付けした「豚のアラ汁」は、地元農家もとりこにするほどのメニューだ。手打ちそばも人気がある。八人家族の地元酪農家の男性(44)は、「年越しそばは、親類分まで十五食も頼む」というほど。店は予約制で年間1300人以上が足を運ぶ。
 「蔵で楽しくがモットー。不器用だけど、そばもお客の前で打って喜んでもらっています」と佐々木さんは胸を張った。
 佐々木さんは稲作と養豚を主とした専業農家の十四代目。消費者交流は地元農協青年部長だった三十代の農政運動がきっかけとなった。「米価下落に輸入自由化。口で訴えても理解が得られずいらだちに近い気持ちが募った」と振り返る。
 地元のグリーンツーリズム活動に没頭し、山形県大石田でそば打ち修業までして催しを盛り上げた。ただ、西欧のように少人数を常時受け入れる場所は農村になかった。
 「好きな時に食を楽しんで農村を分かってもらいたい」。1999年に自宅脇の築百年のもみ倉を食堂に改造した。
 「夢」を後押ししたのは、自慢の豚だった。高校卒業後に養豚に挑戦し、米国研修でスケールの大きな養豚に感化されたこともあって年間三百頭を出荷。仲間4人で作るハム、ソーセージを約400人の顧客に直接届けていた佐々木さんには確信があった。
 開店したころは養豚や稲作、野菜栽培、配達に店の経営まで加わって一年中休みなし。妻の紀子さん(54)も一時体調を崩してしまったという。
 そんな日々にお客の存在が励みになった。評判は口コミで広がり、地元のほか北海道や九州からも観光客が週三、四日訪れた。忙しすぎて豚の出荷数は年間百頭に減らしたほどだが、紀子さんは「田舎でも想像以上の出会いとお客の笑顔がある。とってもぜいたくな気分です」と話す。
 宮城県北の農漁家レストラン・民宿18軒は4年前に連絡会を設立。発起人の佐々木さんが会長となり、仲間の店を訪ねたり情報交換したりしてサービスを高めている。
 「店の名は当初『田尻一号』だった。わざと付けたら、本当に二号、三号ができた」と、近くに農家レストランが増えたことを自分のことのように喜ぶ佐々木さん。「農を支えるのは消費者。やっぱり現場に見てもらうのが一番だ」と笑顔で言った。
 大崎市田尻大貫遠田54。営業時間は午前10時−午後9時で要予約(農繁期は休み)。メニューは蔵楽定食2000円など。そば打ちやハム・ソーセージづくり、野菜収穫も体験できる。0229-39-7548。
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