奥州相馬藩の城下町・福島県相馬市の水田地帯に建つ「農家レストラン 菜の花」。隣の畑で自家栽培した野菜を提供する。キュウリ、ナス、アスパラガス、インゲン、カボチャ。20アールほどの畑にはブルーベリーやラズベリーも育てられている。 「ようこそおいでくださいました」。店主の阿部真貴子さん(50)の声が小ざっぱりとした造りの農家レストランに響く。メニューは「菜の花膳(ぜん)」のみ。自家菜園で作った野菜をふんだんに使っている。膳の内容は菜園の旬に合わせて変わる。畑で栽培していない食材を用いる時は県産、国産にこだわって使用している。デザートの青ノリアイスクリームは地元の松川浦産の青ノリの風味を生かした逸品。ほんのりと香る磯の香りは「菜の花」でしか出会えない極上の味だ。 阿部さんが農家レストランを始めたのは平成15年6月。「自分でやって、どこまでできるか頑張ってみたい」。嫁ぎ先には田んぼもあり畑もあった。農家レストランとしての立地も良さそう。家族も賛成してくれた。 レストランを始めるまでは25年間にわたり県農業改良普及員として働き、農家が「農家レストラン」や「直売所」を立ち上げる際の支援に携わった。食材の調達だけでなく調理技術や盛り付け、接客などのほか、経営管理など「農」以外の仕事が非常に大きなウエートを占めることを身に凍みて感じていた。だからこそ、それまで仕事で培ってきたノウハウを自分の好きな道で生かしたいと思い立った。 「菜の花」は完全予約制。オープン当初はフリーで営業していたが、営業の予定が立たないと家事や畑仕事への影響が大きくレストランの仕事もおろそかになりがち。自分で納得できる料理を提供するために予約制にした。 食に対するこだわりは口コミで広がり、遠方から訪れる人も増えた。「おいしかった」の言葉とともに残さずきれいに食べてもらえた時こそ、最高の喜びを感じる。 料理は空腹を単に紛らわすものではなく、人と人とを結び、心を通わせ合う重要な「仕事」。この揺るぎない信念が農家レストランを支えている。 「ありがとうございました。お味の方はいかがでしたか。ぜひ、感想を聞かせてください」。阿部さんにとって食とは夢と同時に愛情でもある。きょうも昼ご飯の営業を終えると、夏野菜の待つ畑へと向かう。「まごころ」という栄養をたっぷりと含んだ食材の成長に笑顔を見せた。【農家レストラン 菜の花】 相馬市百槻字赤屋敷103。営業時間は午前11時30分から午後2時30分まで。 「菜の花膳」はデザートまたはコーヒー付きで1000円(消費税込み)、 デザート、コーヒーセットで1200円(同)。 定休は日曜日。電話0244-35-2401。 |