秋田県・秋田魁新報社『農家のぜい沢感じて「ゆう菜家」』
女性客らでにぎわう「ゆう菜家」=秋田市雄和向野
出羽丘陵を縫うようにゆったりと流れる雄物川。川沿いには緑鮮やかな水田が広がる。秋田市雄和向野の農家レストラン「ゆう菜家」(ゆうなや)は、のどかな田園風景に真っ赤なアーチが映える新波(あらわ)橋のそばにある。
秋田、大仙、由利本荘の中心部からそれぞれ約40分。山あいにあり、立地条件は決して良くない。それでも平日は主婦グループ、土日祝日は家族連れらでにぎわう。
店主は地元農家の浅野育子さん(54)。ハウス六棟計七アールで栽培しているモロヘイヤを練り込んだだ緑色の「モロヘイヤめん」が看板メニューだ。店の名前の「ゆう」は地元・雄和、菜は野菜・山菜の「菜」から取った。
きっかけは十年ほど前、地元JAの婦人部が主催したそば打ち体験。「つなぎに粘り気のあるものがあればうまくできる」というヒントで、当時県内でもほとんど栽培されていなかったモロヘイヤに着目。うどん粉と合わせて試作・販売したところ、これが好評だった。
じっとしているのが嫌いな性格とあって、栽培と製造だけでは物足りなかった。農業の収入が伸びず、電子機器会社でパート勤めをした日々もあったが、「いつか農家手作りの食事でお客さんと触れ合いたいという思いがあった」と育子さん。
知人の協力を得て、平成12年10月、わずか5ヶ月の準備期間でゆう菜家をオープンさせた。県内最初の農家レストランだった。
基本は、食材本来の味を生かすこと。「クリームやバターなんかを使った複雑な味付けはしないことにしている。というか、そんな料理は作れないんですよ」と気さくに笑う。
店舗は以前、葉タバコの乾燥室として使った農作業小屋。二階の店舗にある天井の太い梁(はり)がその名残だ。内壁は地元産の秋田杉などを使用。店の看板や店内の照明の装飾は、かつて田植えで碁盤の目状に目印をつけるために使った木製の「形押し」に、プラスチック板や障子紙を張って作った。心が自然に和む落ち着いた雰囲気を醸し出している。
一階は長男・明善さん(28)担当の製めん所。めんは朝採りのモロヘイヤをゆでてミキサーにかけ、うどん粉に練り込んでじっくりと寝かせて作る。生地がなじんだところで裁断すると完成。「農家を継ごうという思いはなくて、初めは手伝い感覚だった」と明善さん。しかし、「自分の作っためんの出来具合がすぐ二階にいるお客さんの反応として返ってくるのが面白くなった」と話す。
「自分で作ったものを新鮮なうちに料理して食べることができるのは、きっと人間として一番ぜいたくなこと」と育子さん。「豊かな自然にはぐくまれた食材の素晴らしさ、それを味わうぜいたくな気分を多くの人に感じてほしい」と思っている。
秋田杉をふんだんに使った店内。照明インテリアには「形押し」を利用。「素晴らしい食材で、ぜいたくな気分を味わって」と話す浅野育子さん(手前右)と明善さん(同左)=秋田市雄和向野
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