
「失敗しても若気の至りと言えるうちに挑戦したい」。新潟県の北端にある村上市など村上岩船地域の若手農業グループ「ろっくしっぷ」は3年前から、こだわりのコメ作りを共同で始めた。取り組むのは、米ぬかの活用による完全無農薬生産と岩船米らしい甘みの強化だ。
メンバーは20歳から30歳までの11人。会長の池田幸司さん(24)が勤める会社から借りた同市桃川の10アールの水田が夢の舞台だ。
メンバーの大半がまだ独立していない世代。作業量も虫被害の危険も増す無農薬生産は経営を考えると難しい。やりたい。でもできない。そんな「むらむらとした思い」をそのまま冠し、共同生産米は「ムラムライス」と名付けた。
特徴は米ぬかの大量散布にある。米ぬかを除草剤代わりに使う手法は従来からあったが、ろっくしっぷはこれを肥料としても活用する。10アール当たり通常の2倍に相当する200キロをまく。
発案者で、1996年の結成時から参加する板垣嘉将さん(30)は「落葉樹は落ち葉を自らの栄養にもしている。米から出た米ぬかは、きっと肥料になるはずと考えた」と話す。これが当たった。
コシヒカリの中でも岩船米は甘みと粘りが特徴とされる。米ぬかにはこれらを高めるマグネシウムが豊富に含まれている。大量にまかれた米ぬかは土でゆっくりと分解され、イネもゆっくりと栄養を吸収する。このため、イネが生き生きとした状態が収穫時まで続く。
「初めてできたコメを食べたときは狙い通りの味で感動した。うれしくて皆でもう1回ご飯を炊き足したくらい」と板垣さん。
ただ、無農薬での生産は収穫までの苦労が多い。米ぬかの除草効果は長く持たない。イネが伸び、土をかくはんした後は雑草が次々と伸びていく。メンバーは何度も集まり、素手での草取りに明け暮れる。
地域で行われる農薬散布を除外してもらうよう交渉し、虫を出さないよう細心の注意も要する。
若いメンバーにとっては勉強の場。石栗勝義さん(26)は「今は汚染米の問題などで消費者の見る目も厳しい。農薬に頼らない方法は自分の田んぼにも生かせる」という。
10月12日。3度目の収穫が行われた。昨年からは天日干しも始め、作業量はまた増えた。それでも、まだ青さの残る稲束がはさ木に並ぶ光景は爽快(そうかい)だ。「ことしは量が多いな」。メンバーは笑顔で見上げた。
今後は、新米の直売会に向けた作業が本格化する。価格は1.5キロ、1500円。通常の岩船米の2倍近いが、早速新潟市の業者から90キロ分の注文が寄せられるなど出だしは好調だ。
手製パッケージのラベル用には「村夢米(ムラムライス)」という当て字を考えた。池田さんは「まずは完売が目標。ムラムライスを通じて岩船米をもっと知ってもらいたい」と意気込んでいる。
ろっくしっぷのような地域の若手農業者でつくるグループは「4Hクラブ」と呼ばれる。4HとはHands(腕)、Head(頭)、Heart(心)、Health(健康)の頭文字。いずれも農村を築くのに必要なものだとして米国で名付けられた。
県農林公社によると、県内の4Hクラブは現在、ろっくしっぷなど11。もともとは県内に広く点在していたが、農業人口の減少もあって激減。1982年に58あったクラブは1/5になり、会員も800人超から180人まで減った。
各クラブは近年、活動を盛り上げようと、農業者以外にも門戸を開放。農協職員や一般の会社員ら、食や農業に関心の高い若者を仲間に迎える例が増えている。
数は減っても、各クラブによる研究活動は盛んだ。毎年夏には全クラブが集まって研究発表を行い、成果を競い合う。
7月に胎内市で開かれたサマーフェスティバルでは、イネに肥料を与える機会を減らして省力化を図るアイデアを報告した柏崎市の「Yes農クラブ」が優勝した。
ろっくしっぷは、2001年に野猿被害とその対策をまとめたリポートで全国大会に勝ち進み、奨励賞を受賞した。メンバーの小田直己さん(25)は「成果を競うことで、活動にも張り合いが出る。農業をもっと楽しくしたい」と話した。
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