青森県・東奥日報『地域住民の手づくり「オアシス」(十和田市)』
農業用水のため築かれた人工河川・稲生川を囲むように整備された青森県十和田市の稲生川ふれあい公園は、散歩やジョギングを楽しむ地域住民の憩いの場だけではなく、親水や景観にも配慮した住民の手づくりオアシスだ。季節ごとに「顔」を変え、春から秋にかけては色とりどりの花が咲き誇り、市民に親しまれている。2002年に地域の町内会で結成された稲生川せせらぎ活動委員会の地道な活動により、水質と景観を守るため、用水路の丹念な“化粧直し”が行われている。
稲生川の水利施設を見学する子どもたち。
十和田市では、地域を挙げて農業用水への理解を深めてもらう取り組みが行われている
南部盛岡藩士・新渡戸傅(つとう)らによって造られ、奥入瀬川を水源とする稲生川は、十和田市など2市4町の田んぼに水を供給し、地域住民の生活を支えてきた。稲生川せせらぎ活動委員会は、国の農業水利事業によって生じた遊休地を有効に利用しようと、新たに着工した「地域用水機能増進事業」をきっかけに発足。景観を守るため、公園機能を兼ね備えた「地域の用水路」にする整備が始まった。
周辺住民のうち約1/4は農家だが、非農家にとっては用水路へのなじみが薄く、発足当時は管理をめぐって意見が分かれた。会長の平野隆夫さん(65)は「住民説明会は喧々囂々(けんけんごうごう)で、ボランティアではとても始められそうになかった」と苦笑いする。平野さんは、自らが会長を務める町内会のメンバーに呼び掛け、率先して活動を開始。その後、見よう見まねで草むしりなどを始める町内会が増え始め、現在は16町内会(会員2,000人)が活動の輪に加わっている。
活動範囲は、稲生川の幹線用水路の一部と、その沿線にある支線用水路を合わせた約七キロの距離。現在は、地域の子供たちが川や魚と親しむことができる地域ぐるみの祭りを、年に1度開催している。各町内会でも水車を設置したり、河原で拾った石を積んで花壇を造ったりと、活動の幅は年々広がる。管理方法は町内会に任せており、活動頻度や植える花まで全く違う。個性が出るために競争意識が働き、結果的に街の景観レベルを高めているという。
事務局の稲生川土地改良区が、町内会ごとに整備担当者を決めようとしたこともあったが、住民に反対され白紙に。「今思えば、担当者を決めなかったことが結果的に功を奏したのではないか」と同土改区の米田安典・工事課長(58)は振り返る。強制参加にしなかったことが、長続きの秘訣(ひけつ)だ。
活動を続ける上での課題も多い。参加者の高齢化や、固定化して同じ顔ぶれが目立つようになったことだ。平野さんは「お年寄りが多いので心配はあるが、景観と用水路を守るためにリーダーの育成に力を注ぎたい」と意気込んでいる。
稲生川ふれあい祭りで、
ニジマスのつかみ捕りに挑戦する子どもたち
住民手作りの水車が
設置された地域用水路の前で、
これまでの取り組みを語り合う
平野会長(右)と米田課長
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