「おはよう」「今日もいいのが取れたよ」。喜多方市の熱塩加納地区。会北中学校に併設された共同調理場に毎朝、朝取りの新鮮な地場産野菜が並ぶ。届けるのは地元農家でつくる「まごころ野菜の会」(岩下清会長)会員。野菜は会員が育てた有機無農薬野菜。幼稚園と中学校、2つの小学校の給食に調理され、昼には子どもたちの前に並ぶ。 喜多方市と昨年合併した旧熱塩加納村では1980(昭和55)年から有機低農薬米(さゆり米)の栽培に取り組んでいる。「これを子どもたちに食べさせたい」との声が小学校のPTAから上がり、村や村教委、JAなどが米飯給食を模索。給食をめぐる制度、補助金などの制約を克服し、89年にさゆり米による給食を実現した。同時に、「野菜も地元産の有機無農薬のものを食べさせたい」との声が高まった。 こうした要望に応え、小学校の保護者を中心にした農家有志が給食の食材として有機無農薬の野菜の供給を開始。翌年には「学校給食用有機無農薬野菜供給者の会」を立ち上げた。「まごころ野菜供給者の会」を経て、30代から80代までの会員31人が現在の名称で活動している。 同会は無化学農薬・無化学肥料を基本とした栽培の「約束事」を明文化。年に2回の勉強会を重ね、栽培法の徹底を図っている。調理しやすさを考慮し、形状などの努力目標も明確にしている。岩下会長は「子どもたちに安全で安心な野菜を食べさせたいという会員共通の思いが活動の基本。子どもの喜ぶ顔を見るとうれしいしね」と長続きの秘訣(ひけつ)を話す。 会員が供給しているのは野菜や果物、鶏卵、農産加工品など。供給に向けては、会員が上期と下期に分けて供給可能な数量を共同調理場に報告、調理場の学校栄養職員がこれを基に1ヵ月の献立をつくる。さらに、1週間分の具体的な食材を会員に発注、各会員が共同調理場に搬入する。 共同調理場は昨年4月に完成、調理室に隣接する中学校の食堂で給食を提供するほか、小学校と幼稚園には保冷車で給食を配送している。食堂入り口にはその日の給食の食材を、生産者の写真とともに展示、生徒と会員をつないでいる。 ゴーヤ料理がメーンだった8月29日。中学3年の原慶次君は「ゴーヤはちょっと苦手。でも、野菜は何でもうまいから給食は全部食べる」と、会員の写真を前にほほ笑んだ。 学校栄養職員の佐藤明子さんは「安全で新鮮なものを食べることができ、子どもたちは本当に幸せ。子どもたちは給食を誇りに思っており、食への意識と関心の高さを感じる」と話す。 会津地方最北部の積雪寒冷地帯。冬野菜の確保や、会員の高齢化などの課題もある。「活動を続けるため会員の拡大を目指したい」と岩下会長。中学2年生の孫を持つ会員の沢口ハルコさん(70)は「おいしかったよ、と孫から言われるのがうれしい。できるだけ畑仕事を続けたい」と笑顔を見せた。
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