福島県・福島民報社『小学校農業教育特区(福島県喜多方市)』
9月上旬、残暑の厳しい日差しが照りつける中福島県喜多方市熱塩加納町の熱塩小の児童がジャガイモやオクラ、アマトウガラシなどを収穫した。5,6年生は額の汗をぬぐいながら自分たちで育てた野菜を手にする。その場でアマトウガラシをかじる子もいる。「苦い」「いや、甘いよ」。歓声が畑に響く。5年生の遠藤佳奈さんは「自分が育てたトマトはとても甘いよ」。笑顔で新鮮なトマトを差し出した。
昨年11月、地域を限定して規制緩和する構造改革特区計画に喜多方市の「小学校農業教育特区」が認定され、市内の3小学校に「農業科」が導入された。命をはぐくむ農業を生かした全国初の「心の教育」がスタートした。
協力してジャガイモを収穫する児童
農業科を設けたのは市内の堂島、熊倉、熱塩の3小学校で、3年生から6年生までを対象とした。週1回程度の活動で堂島、熊倉の2校は年間35時間、熱塩は年間45時間の授業がある。各校で年間の指導計画を立て、稲作を基本にジャガイモやサツマイモ、トウモロコシなどの野菜も育てる。 これまでも総合的な学習に農業体験を取り入れた学校は数多くあったが、田植えや稲刈りなど行事の体験に止まっていた。農業科では体験だけでなく、土作りから田植え、稲刈り、水の管理や草取りなど年間を通じて体系的に学ぶ。熱塩加納町の農家で、農業科の支援員を務める小林芳正さんは「年間を通じて農業を学ぶことで自然の厳しさと素晴らしさが分かるようになる」と意義を話す。
農業を体験的に学ぶ目標を学年ごとに定めた。3年生は世話をすること自体を目指し、4年生は世話以前の土作りも含める。5年生は栽培作物の幅を広げて食と健康について学び、6年生は地球環境や生命の循環をテーマに理解を深める。熱塩小の飯野桂子教諭は「農作物ができる過程を理解できるようになった。緑を大切にする心が養われてきた」と子どもたちの成長を実感する。
原則として担任教諭が授業を指導し、地元の住民の手助けも受けながら進める。ほとんどの教諭は農業の実体験がない。市内外の農業高などと交流会や研修会を企画し、指導方法を見出す日々が続く。成績評価については、評定を設けず総合的な学習と同じく記述式を採用。学年ごとに定めた目標に向けた児童の取り組み姿勢を評価する。
将来的には市内の全22小学校で農業科の導入を目指す。市教委が中心となり、来年度の農業科に使用する副読本の作成や実施校を増やす準備を進めている。具体的に取り組むと、田畑や協力者の確保などクリアしなければならない問題も多い。農業科導入に携わった市教委の渡部裕指導主事は「やってみて分かったことが数多くある。来年は副読本も完成させ、しっかりした指導計画を作りたい」と話す。
農業科の目的は農業の知識を学ぶことが主ではなく、農業を通して環境や生命の大切さを児童が自ら考えること―。農業は地域産業、そして地域コミュニティーの核。農業を生かした独自の心の教育は、これからもより良い在り方を求めて知恵を絞る。
自分で育てたアマトウガラシを食べる児童
地元の農家とともに田植えの苗を運ぶ児童
Copyright (C) 東北八新聞社協議会
<Back