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秋田県・秋田魁新報社『“大農さん”の直売所』
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 毎週木曜の午前11時。大曲農業高校(大仙市)の職員玄関前に、1時間だけの農産物直売所が開店する。「農産物販売」のオレンジ色ののぼりが目印。会議用の長机が陳列棚となり、同校農場でその日の朝採れたばかりのトマトや枝豆のほか、オクラやラディッシュ(ハツカダイコン)などが並ぶ。レジ台は教室から運んできた机だ。
 直売所は1、2年生の販売実習の一環として8年前に始まった。生産重視だった農業教育から、販売や流通、商売のノウハウを身に付けてもらうためだった。担当の佐藤文康教諭(41)は「農産物は売れなければ収益にならない。自分たちで作ったものをいかに売るか。それを若いうちに分かってほしい」と話す。
 同校の愛称は大農。買い物に来る常連の主婦たちは、ここで販売される「大農産」の農産物を親しみを込めて「大農さん」と呼んでいる。
 販売する農産物のほとんどは、100円から300円と手ごろ。中でも採卵直後に店頭に並ぶ鶏卵は一番人気。開店の20分前には近所の主婦らが行列をつくる。主婦の1人は「旬の果物がいつから並ぶのか。スーパーでは直接聞きにくいようなことでも気軽に聞ける。大農さんという理由だけで、ついまとめ買いすることもある」と笑う。生徒が作っていることに安心感と愛着を感じているようだ。
 「漬物にいいナスですよ」「今日採ってきたものです」。販売は開店から20分が勝負。生徒たちの呼び込みも積極的だ。レジ担当の菅原真央さん(農業科学科2年)は「どんなお客さんが来ているのか、お客さんはどんな情報をほしがっているかが、だんだん分かってきたつもり」と話す。今では、どの商品を売り切るかを心に決めて直売所に立つのが楽しみの1つという。
 かごに農産物を詰めて、周辺の官公庁や住宅街などを回る“飛び込み営業”も販売実習の一環。実習後、商品が売れ残ればその理由を考えて、販売方法の改善に頭をひねる。
 こうして考えて実践に移したのが、繰り返し使える布製エコバッグのプレゼント。毎週の農産物直売で先着5人に配っている。環境や地球的規模の視点を重視する同校の方針とも一致。レジ袋削減など環境への配慮をPRしながら、リピーターづくりにつなげようという試みだ。
 販売実習を強化しているのは、卒業後に就農する生徒の減少が背景にある。県内の農業高校では最も古く、創立150年の歴史がある同校。昭和40年代半ばには卒業した生徒のうち、200人近くが就農したが、今では卒業後の就農は1けた台。大学で農業を専攻する生徒も1割前後にとどまっている。
 就農者が増えない現状は農業高校共通の悩みだ。同校の校内アンケートでは、「農作業がきつい」「収入が低い」など農業にマイナスイメージを持つ生徒が少なくない。家族が農業関連の仕事に従事していない生徒も増えてきた。
 同校農場長の高橋寿徳教諭(45)は「就農者を増やすには、販売や加工など生産以外の側面を体験させることを通じて、もっと農業を深く知りたいという人材をつくるかにかかっている」と話す。
 その足掛かりとして、同校が重視しているのは農業を通じた地域との交流拡大。市民を対象にした野菜のオーナー制度や市内外へのイベント出店を通じて、対外的なコミュニケーション能力を身に着けてもらおうという考えだ。地産地消の基盤づくりにもつながっていく。
 佐々木千遥さん(同科3年)は「自分たちが作った農産物を評価し、買ってもらう。その体験が、地域とのかかわりを深める上でいい刺激になっている」と、笑顔を見せた。
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お目当ての農産物を求める買い物客でにぎわう
大曲農業高校の直売所=秋田県大仙市
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販売アップを目指して生徒たちが作ったエコバッグ
=秋田県大仙市の大曲農業高校
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