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山形県・山形新聞社『農村の食と暮らしを感じる「知憩軒」(山形県鶴岡市)』
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 「ここに来て、料理を食べてもらえば、農家の日常の暮らしを感じてもらえるはず。みんなが食べている米や野菜は、そんな農家の人たちが作っていると分かれば、安心して買ってもらえるでしょ」。鶴岡市西荒屋で、農家レストランと農家民宿「知憩軒(ちけいけん)」を経営する長南光さん(58)は、てきぱきと昼のコース料理を作りながら、自らが取り組む農業への思いを口にした。
 国道112号に沿う庄内有数の果樹地帯。知憩軒は、田んぼや果樹畑に囲まれた中にたたずむ。駐車場からレストランまで30メートルほどの距離。桃などの果樹や野菜が植えられた畑と、農家の庭先に挟まれた小路を歩くと、のどかな農村風景の中に身を置くことができる。
 レストランは、50年を超える自宅を活用。神棚や仏壇もあれば、いろりもある。古民家ならではの落ち着いた色調や照明に加え、聞こえるのはセミの鳴き声と風の音で、時折、風鈴の音色が響く。時間を忘れてもらおうと、屋内に時計はない。料理を待つ人も、静かな空間とゆっくりと流れる時間を満喫している。
 「お待たせしました」。料理を運んできた長女みゆきさん(34)の声が響いた。料理から配膳(はいぜん)、接客と母娘で切り盛りする。昼は長男の嫁歩美さん(34)も手伝い、女性3人で県内外や首都圏などからも訪れる客をもてなす。
 レストランを始めた4年前。無登録農薬問題の波紋が広がった時期だ。「農家はみんな一生懸命作っている。しかし、消費者はその姿を知らない。どうすれば、農家の姿を分かってもらえるのか、農産物の安心感を与えられるのか」。考えた長南さんの行き着いた先が農家レストランだった。
 農村地域で、代々農家の自分の家に消費者を招き、自分たちが受け継いだり、工夫して作り上げてきた農家ならではの料理を食べてもらう。長南さんは「農家のことを言葉で説明するのは難しい。来てもらって、料理を味わってもらうのが、一番簡単で的確に農家情報を発信できる方法なんですよ」と話す。
 料理の素材は、もちろん地物。自家製の野菜や果樹、米をはじめ、春は山菜、秋はキノコ、冬は越冬野菜の根菜類など、季節の素材で旬を逃さないように、常に畑と相談してメニューを考えている。余分な材料を使わないためにも、昼と夜のコース料理は、すべて予約制。作った農産物を無駄にしたくない、という農家ならではのこだわりがある。調理の基本は、家庭で家族のために作る。食べる人の体と心を満たす料理を目指している。
 首都圏などからの旅行客が立ち寄った。料理を口にした男性は「食べて幸せな気持ちになった。人の心の温かさ、食材への愛情を感じた」と語った。
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味わい深い料理と落ち着いた古民家の雰囲気が訪問客の心を和ませる
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「少しでも来ていただいた方の心と体が満たされれば」と料理に思いを込める長南さん親子
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